クシマクロビオティックスから見た、腎臓および膀胱の疾患の原因と対応方法について説明します。
伝統的な東洋医学では、腎臓と膀胱は、脾臓(ひぞう)や生殖機能、総体的活力、再生機能を支配するとしています。
泌尿器系の疾患は、現代社会によく見られ、腎臓や膀胱の感染症、腎臓や膀胱の結石、尿毒症、失禁などが含まれるとされます。
腎臓は、脊柱に近い腹腔の上部に位置し、血液中の不純物をろ過して、体内の老廃物を尿として排出します。また、血液をろ過する際に、血液の量と成分を調節する役目も果たすとされます。
そのほか、体内の塩分濃度を調整したり、赤血球細胞の生成を促進するエリスロポエチンなどのホルモンを分泌したり、血圧や腎臓の機能を調整するレニンなどの酵素を分泌したり、電解液や酸性度の均衡を保持したりする働きもあるとしています。
さらに、腎臓は、ビタミンDを、より活性化した形態に変換する役目も果たすとしています。
Sponsored link
泌尿器系の、もう1つの主要な臓器は、筋肉の動きで両方の腎臓から膀胱に尿を運搬する細長い管である尿管であるとされます。
膀胱は、腎盂(じんう)に位置する逆Y字型の袋状の臓器で、尿の貯蔵の役目を果たし、成人の平均で500ミリリットル程度、およそ250~600ミリリットルの尿を溜めることができるとされます。膀胱の容量は、身体の大きさはあまり関係がなく、女性より男性のほうが膀胱の容量が大きいとされます。そのため男性は、女性よりも長く排尿を我慢できるとされます。また尿道は、尿を体外へと排出するための導管で、男性は、女性の約5倍の長さがあるとされます。
泌尿器系疾患の大半で、中庸にバランスが取れた食事療法の実践によって、症状を予防したり解消したりすることができるとしています。
また、腎臓および膀胱癌 のコンテンツも参照することとされます。
泌尿器系疾患の中で、最近よく耳にするようになり、筆者なども気をつけるべきなのは、前立腺癌と考えています。が、近年、日本では、色々な種類がある腎臓病を、総称してCKD(Chronic Kidney Disease=慢性腎臓病)と呼ぶようになり、この患者数を見ても注意すべき状態になっています。日本腎臓学会による2008年の統計では、日本の成人の8人に1人、およそ1330万人がCKD患者と推計され、治療が必要なレベルの患者も約600万人いるとされます。
実際に、マクロビオティック食事療法を行う場合には、必ず事前に専門家に相談するようにしてください。
西洋現代医学のほかにも、対応方法があるかもしれないということは認識しておきましょう。
▼前提致命的な症状が疑われる場合や致命的な現象を引き起こしかねない状況が想定される場合には、まずは至急、西洋医学などで医師の受診を受けてください。ここでは、予防的な観点を中心に、原因や対応方法について説明します。
1 症状
腎臓および膀胱の疾患では、以下のような症状が見られるとしています。
- いびきをかく
- うめく
- 寝汗をかく
- 排尿に異常がある
- 背中の下部に痛みがある
- 脚に腫れが見られる
- 異常な早起きまたは夜更かし
- 夜間にトイレに起きる
- 脾臓(ひぞう)が、ねじれて動くような症状を感じる
- 不眠症
- 悪夢にうなされる
- 吐き気、嘔吐
- 無気力
- 眠気がある
- 恐怖や臆病、内気、躊躇、優柔不断、明晰でない、偏執症、統合失調症などの精神的、心理的な症状や疾患がある
- 心身両面の活力減退
- 生殖組織に異常がある
Sponsored link
2 兆候
伝統的な東洋医学では、腎臓および膀胱の疾患が進む兆候について、さらに詳細な、次のような洞察が示されているとされます。
- 眼の下に黒ずみがある
腎臓が硬化した結果として、毒素を含んだ血液が停滞していることを示す。
この症状は、動物性食品や塩分、チップス、焼き締めた食品など、極陽性な、強力な収縮性を持った食品の過剰摂取から起きる。
- 眼の下に緩みがある
腎臓に問題があることを示し、次の2つがある。
・眼の下が水っぽく腫れているもの
・眼の下が脂っぽいもの
1つめの、眼の下が水っぽく腫れているタイプは、水分が過剰に蓄積され、腎臓が腫れ、結果として頻尿になっていることを示す。こうした症状を引き起こす食べ物には、ありとあらゆる種類の飲みものや果物、果汁が含まれる。
2つめの、眼の下が脂っぽいタイプは、腎臓の細胞に脂肪や粘液が堆積していることを示す。また、このタイプのもので、小さな吹き出物や黒っぽい斑点が見られるときは、腎臓に結石ができつつあることを示している。
こうした症状を引き起こす食べ物には、肉類や精白小麦粉、砂糖、油などが含まれる。
- 手足が湿っている
水分の過剰摂取から、腎臓や膀胱に負担がかかっていることを示す。
- 姿勢が悪い腎臓に問題があることを示す。
座ったり立ったり歩いたりするときに、前かがみになっている場合は、腎臓が硬化していることを示す。
それとは逆に、背中が弓なりに反っていたり、長い時間、立っていられなかったりする場合は、腎臓が極陰性状態になって拡張していることを示す。
3 原因
- 体内の余剰物質の大半は、飲食物や化学薬品、毒物、望ましくない微生物などの形で取り込まれ、腎臓で濾過され、膀胱を経由し、尿として体外に排出されます。
食べすぎたり飲みすぎたりすると、そのぶん、腎臓が過剰に働くことになり、血中の不純物を大量に濾過することになるとしています。 - 肉類や卵、魚介類、パンなど硬く焼き締めた小麦粉製品など、極陽性食品の過剰摂取は、腎臓を硬化させ、脂肪や粘液を溜めこんで、結果として血行や排尿が滞ることになるとしています。
- 精白穀物や熱帯原産の食品、果物、果汁、砂糖、菓子類、水分、アルコール類、コーヒーなどの刺激物、薬物など極陰性な拡散性を持った食品は、腎臓を弛緩させ、腫れが生じ、水分の過剰蓄積と過剰排出、不適切な血液ろ過を引き起こすとしています。
- 冷たく冷やしたり、凍らせたりしている食品の摂取は、特に腎臓や膀胱を収縮させるとしています。
こうした食品には、清涼飲料水やミネラルウォーター、ビール、ありとあらゆる種類の冷たい飲みものが含まれるとしています。 - 動物性蛋白質など高蛋白な食品は、余分な尿を作る原因になるとしています。
- 腎臓の結石は、尿に含まれる高濃度のシュウ酸カルシウムと関連性があるとされます。
シュウ酸を多く含む食品は、ホウレンソウやココア、コショウ、木の実、紅茶などがあるとされます。 - 塩分や水分の摂りすぎ、または塩分や水分の欠乏は、泌尿器系組織の問題を引き起こすとされます。
- 砂糖やチョコレート、精製甘味料など、菓子類の摂りすぎは、体内の血糖値を制御している膵臓(すいぞう)の過度な負担となり、結果として腎臓や膀胱の機能を弱めてしまうとしています。
4 個別の症状について
4-1 腎臓または膀胱の結石
4-2 腎臓疾患
4-3 腎臓や膀胱の感染症(尿路感染症)
4-4 腎炎
4-5 腎臓硬化
5 症状の解消
個別の症状について のそれぞれの記載に従います。ほかにも注意点や特別な料理や飲みもの、外側からの家庭療法など、多くの対応方法が紹介されています。一部を紹介しますので、専門家への相談の際に確認するとよいのではと思います。
なお、手当ての頻度や期間は、患者の状態や症状の重さによって異なるものとされます。
- 精白しない全粒のままの穀物を毎日の主食として摂る。
蕎麦は、特に腎臓と膀胱の機能を強めるが、腎臓と膀胱の両組織がすでに陽性過剰な収縮状態にあるときには、摂取を避けること。また、黒米をはじめ、黒っぽい色の穀物も、腎臓や膀胱の機能を強める。 - クッキーやパイ、クラッカー、パンなど、硬く焼き締めた小麦粉製品はできるかぎり摂取量を減らす。
- 小豆やレンズ豆、ひよこ豆、黒豆など、腎臓の形をしている豆類は、特に排尿器官を強化する作用がある。なるべく小粒のものを選んで食べるとよい。また、豆製品は定期的に食べてよい。特に高野豆腐がよい。
- 野菜類では、根菜や切干大根、干しシイタケのような乾燥野菜、ケール*のような冬野菜が、腎臓機能を養うのによい。
- 海藻類は腎臓や膀胱に滋養を与えてくれる。
症状が陽性過剰な収縮状態でなければ、特にコンブがよい。 - 強化作用がある食品としては、次のようなものがある。
揚げおむすび
雑穀のコロッケ
雑穀を加えて圧力なべで炊いたご飯
栗入りの黒豆
豆や穀物のシチュー - 早寝早起きし、心身両面での活動的な生活を心がける。
6 留意点
- 腎臓の疾患は、高血圧や心臓疾患にもつながる可能性がある。そのため、心臓や循環器系の組織も強化するとよい。
- マクロビオティック食事法の実施は、腎臓透析を行っている人や強力な医薬品を服用している人にも効果的である。
食事や生活法の変更で、症状に改善が見られた場合には、これまで実施してきた治療や投薬を段階的に軽減したい旨を、西洋医学などの担当医師に相談するのもよい。
* ケール:
アブラナ科のケールは、キャベツの一種です。キャベツは結球しますが、ケールは不結球性となり、生命力が非常に強い緑黄野菜とされています。また温帯では一年中栽培できるとされています。
栄養価が非常に高く、各種ビタミンやミネラル、葉緑素(クロロフィル)、GABA(ギャバ)、食物繊維、たんぱく質なども豊富で、単一野菜では最高レベルとされているようです。また、抗酸化物質であるルテインが多く含まれています。青汁の原料とされます。
THE マクロビオティック 久司道夫 マガジンハウス
- 専門家への相談窓口
クシマクロビオティックス・コンシェルジュ検定事務局
住所:〒164-0003 東京都中野区東中野1-57-9 401 (株)スパイラルアップ内
関連するコンテンツ |