クシマクロビオティックスから見た、胃腸炎の原因と対応方法について説明します。
胃腸炎は、胃と小腸、大腸に起こった炎症で、下痢や吐き気、嘔吐、腹痛などの様々な症状が見られ、食欲不振や腹部の不快感、けいれん、発熱などを伴って、軽症から重症のものまであるとされます。
健康な人では、軽症ですむことが多いですが、他の病気にかかっていたり、衰弱していたり、高齢者であったり、乳幼児であったりする場合、脱水症状や体液の電解質バランスが崩れて、生命に危険が及ぶことがあるとされます。世界的に見ると、年間で約300~600万人の子どもが、感染症からの胃腸炎で死亡しているとされます。
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胃腸炎は、その多くがウイルスや細菌への感染性のものであり、こうした感染症では、人から人へ移るものがあるとされます。大勢の人が、突然に発症して流行することがあり、日本でも11~2月頃に、市町村や行政機関から警報が出され、注意が喚起されることが多いとされます。
特に、食中毒という分類で見ると、患者の約半数はノロウイルスによるとされ、約70%が11~2月に発生し、冬場の感染性胃腸炎の集団発生の多くが、ノロウイルスによるものと考えられています。平成27年度では、食中毒の総患者数約23000人のうち、約15000人の患者がノロウイルスによるものとされます。
胃腸炎は、一般的に、次のように分類されます。他に、症状が急激に起こった際など、急性胃腸炎と分類されることもあるとされます。
1 感染性胃腸炎
ウイルスや細菌への感染が原因で起こる胃腸炎。感染性胃腸炎は、季節的に見ると、春のロタウイルス感染、夏場の様々な細菌感染、冬場のノロウイルス感染がよく知られるとされる。
- ウイルス性胃腸炎
患者数が多く、代表的なものは次のものとされる。他にも、アストロウイルスやアデノウイルスなど、様々なウイルス性胃腸炎がある。- ノロウイルス:
年長以降の子どもと成人に多く、冬に多いが、年間に渡って感染する。感染力が強いため、集団発生することが多い。汚染された食品や水を飲むことでの感染が多いが、感染者の嘔吐物やおむつなどから、ノロウイルスが乾燥して空気中に漂い、口に入ることでも感染が広がる。
症状は、水様の下痢が頻繁に続き、90%の患者が嘔吐するとされ、吐き気や腹痛、軽度の発熱などがある。感染から1~2日後に症状が現われ、多くは1~2日で回復し、後遺症もない。感染しても発症しない場合や軽い風邪のような症状が現われるだけのこともあるが、病院や社会福祉施設での集団感染では、死者が出たこともある。
従来的医療では、一般的に、抗ウイルス薬は投与せず、症状を軽くする対症療法が行われる。
参考の外部リンク:ノロウイルスに関するQ&A(厚生労働省) - ロタウイルス:
春に流行することが多い、乳児や子どもを中心としたウイルス性胃腸炎で、重症な脱水症状を起こす下痢を伴うことがある。成人に移った場合は、一般的に軽症ですむとされる。
症状は、水様の下痢が頻繁に続き、嘔吐と39℃以上の高熱が出る。感染から1~3日後に症状が現われ、5~7日間程度続く。
従来的医療では、一般的に、抗ウイルス薬は投与せず、症状を軽くする対症療法が行われる。
- ノロウイルス:
- 細菌性胃腸炎
細菌性胃腸炎は、ウイルス性胃腸炎ほど患者数は多くないが、感染すると、症状が重くなる傾向があるとされ、嘔吐や下痢、発熱、腹痛、血便など様々な症状が現われる。血圧の低下や意識混濁などショック症状を起こすこともある。その一方、感染したとしても、特に成人の場合、発症しないこともある。
多くの場合、抗生物質が有効。夏場の感染が多いが、病原性大腸菌のO-157は冬にも見られることがあり注意が必要。
主に、加熱調理が不十分な食品に含まれた細菌が、腸内で増殖し、炎症を起こす。
代表的なものは次のものとされる。- カンピロバクター:
鳥肉や牛肉、井戸水、ペットなど動物の糞などに含まれる。潜伏期間は2~11日程度。子どもの罹患が多い。症状は軽症のものがほとんど。日本では、鶏肉や牛レバーの生食が原因のことが多い。従来的医療では、一般的に、抗生物質が投与される。 - 腸炎ビブリオ:
海水中の細菌である腸炎ビブリオにより発症する。調理不十分であったり、鮮度の低い生の魚介類を食べることで感染する。夏場の6~9月に頻発する。潜伏期間は8~24時間程度。従来的医療では、一般的には、特別な治療法はなく、対症療法が中心で、自然に治癒することが多い。 - サルモネラ:
サルモネラ属菌は、腸チフスなども含まれ、細かく分類すると2500種類以上の種類があり、鶏肉や卵、牛肉、ペットなど動物の糞などに含まれる。潜伏期間は6~72時間程度。近年では減少傾向とされる。小児では重症化しやすく、注意が必要とされる。従来的医療では、一般的に、抗生物質が投与される。
- 病原性大腸菌:
特に、毒素を生み出し、出血を伴う腸炎や溶血性尿毒症症候群(HUS)を引き起こす、O-157などの腸管出血性大腸菌の感染は、幼児や高齢者では死亡することもある。生や加熱不十分な肉を食べて発症することが多い。年間の患者数は100~300人程度。潜伏期間は3~5日程度。激しい腹痛や血便がある場合、至急、医療機関の受信が求められる。
- カンピロバクター:
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2 感染性以外の胃腸炎
化学物質(水銀やヒ素、カドミウム、鉛など)や医薬品(抗生物質など)、毒キノコなどが原因。
従来的医療では、それぞれの原因にあわせた治療が行われる。
3 神経性(ストレス性)胃腸炎
ストレスなどが原因とされる胃腸炎。内視鏡などで検査しても異常はないが、胃や腸に違和感を感じたり痛みを感じたりする症状。
近年では、NUD(機能性胃腸症)やFD(機能性ディスペプシア)と分類されることもある。また、要因も、ストレスよりピロリ菌への感染が主ではないかという意見もある。
従来的医療では、一般的に、次のような医薬品が処方される。また、ピロリ菌に感染していた場合、除去する治療も行われる。
- 消化管の運動機能改善薬
- 胃酸分泌抑制薬(ヒスタミンH2受容体拮抗薬やプロトンポンプ阻害薬)
- 抗うつ剤、抗不安剤
- 漢方薬
- 鍼灸
実際に、マクロビオティック食事療法を行う場合には、必ず事前に専門家に相談するようにしてください。
西洋現代医学のほかにも、対応方法があるかもしれないということは認識しておきましょう。
▼前提
致命的な症状が疑われる場合や致命的な現象を引き起こしかねない状況が想定される場合には、まずは至急、西洋医学などで医師の受診を受けてください。ここでは、予防的な観点を中心に、原因や対応方法について説明します。
▼症状の予防と解消
陰性傾向に対応した食事(標準食から陽の要因をわずかに強調する方向で、食事内容を修正)に従います。
また以下の注意点があります。専門家への相談の際に確認するとよいのではと思います。
▼留意点
- 生命の危険が伴うような脱水症状や合併症などが疑われる場合には、緊急な医療処置が必要である。まずは至急、医療機関を受診すること。
THE マクロビオティック 久司道夫 マガジンハウス
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