クシマクロビオティックスから見た、熱帯原産の野菜について説明します。
熱帯や亜熱帯を原産とする野菜は、それらの熱帯や亜熱帯の地域では食べても問題ありませんが、日本を含む、四季のある温帯地方では、たまにしか食べなかったとしても、心身に極端に偏りのあるエネルギーを与え、悪影響を及ぼすとしています。
また、これら熱帯や亜熱帯を原産とする野菜類は、たとえ温帯で栽培されたとしても、悪影響を及ぼすとしています。
理由としては、ほとんどの場合、これらの熱帯や亜熱帯の野菜が、新しい環境である温帯で栽培されるようになってから、2~3世紀しか経っておらず、進化的に適応できていないためであるとしています。しかしながら、これらの野菜類も、数千年も経てば、新しい土壌や気候、生育条件に適応し、食用として適したものになるかもしれないとしています。
性質としては、極陰性とされます。
クシマクロビオティックでは、ナス科の野菜は食用として使わないようにすべきであり、使わないことが賢明であるとしています。ただし薬としてならば薬効があるため使うのもよいとしています。
家庭療法では、蓄積した毒を吸い出すための湿布としてジャガイモを使ったり、ナスを焼いて粉にしたものをデンシーという歯磨き粉にして使ったりするとされます。
熱帯や亜熱帯原産の野菜の中でも、特にナス科の以下のものが食用に不適であるとしています。
- ジャガイモ
- トマト
- ナス
- ピーマン
- トウガラシ、シマトウガラシ
- パプリカ
- ベラドンナ*1
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原産地であるアンデスの山岳地帯では、ジャガイモはもともと食用ではなく、主にトウモロコシ畑の被膜作物として、土壌の劣悪化を防ぐために使われていたとされます。
そして、飢饉で穀物が取れないときに、水に浸すことで苦みや毒性を抜いてから食べられたとしています。なお、葉や花、茎、実など地上に出ている部分には、ソラニン*2という毒が含まれるため、塊茎だけが食べられたとされています。
おもに家庭菜園などで作られた、育ち切っていない小さなジャガイモには、全体的にソラニンやチャコニン*3を多く含んでいることがあるので、注意が必要とされます。近年では、小学校の調理実習などで、ソラニンやチャコニンが原因になった食中毒が、毎年のように起きているとされます。
食中毒を避けるには、芽や緑色の部分を、念入りに取り除くことが必要とされます。
ジャガイモの実では、100gあたり、平均して0.0075g(7.5mg)のソラニンやチャコニンを含んでいるとされ、このうち3~8割が皮の周辺にあるとされます。
特に、光にあたって緑色になった部分では、100gあたり、0.1g(100mg)以上のソラニンやチャコニンを含んでいるとされます。芽や傷のついた部分にも、ソラニンやチャコニンが多く含まれるとされます。
体重が50kgの人の場合には、ソラニンやチャコニンを0.05g(50mg)摂取すると、症状が現われる可能性があるとされ、0.15~0.3g(150~300mg)を摂取すると死亡する可能性があるとされます。
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また、トマトは中南米の熱帯で低地が原産とされ、やはりジャガイモと同じような毒を持っているとされます。
ナスはインドが原産で、中世にヨーロッパに伝わったとされます。
これらジャガイモとトマト、ナスは、数百年のあいだ、毒を持つ植物と考えられ、もっぱら観賞用に栽培されてきたとしています。そして大昔から薬として使われ、たとえば神経組織の刺激や抑制に使ったり、脈泊を早めたり、血圧を高めたりするのに使われたとしています。
現在、一般的に食べられているジャガイモやトマトは、昔のものよりも大きく、アク(灰汁)も弱く、苦みも少ないが、常食すると、免疫力が失われやすくなり、風邪や発疹、かゆみ、性的活力の喪失、ポリオ(流行性小児まひ)に至るまで、極端に拡散的な様々な異常に苦しめられるようになる可能性があるとしています。
こうした事実は、現代科学でも確認されており、たとえばニュージャージー州にあるクック・カレッジの園芸学教授であるノーマン・チルダーズ博士は、ナス科植物の摂取が、関節炎を引き起こす主要原因になっていることを発見したとしています。
やむを得ない場合の食べかたとしては、以下のように説明されています。
- 陽性の強い方法で料理することによって、極陰性のエネルギーを相殺し、身体に対する害をいくらかなりとも減じることができるとしています。
- 生のまま食べるよりは火を通したほうがよく、それも長時間火を通して煮込んだり、よく焼いたほうがいいとされます。
- 味付けもやや濃いめにして、自然海塩や醤油、味噌を少し多めに使うとよいとしています。
ほかに、一般的なスーパーなどで簡単に購入できる熱帯原産の野菜としては、以下のようなものがあります。これらも、できれば避けるか、最小限の摂取に抑えたほうがよいものとされます。
- アスパラガス
- アボガド
- ホウレンソウ
- サツマイモ
最後に、ポイントをまとめます。
- 熱帯原産の野菜類は、性質が極陰性であり、常食すると、免疫力が失われやすくなり、風邪や発疹、かゆみ、性的活力の喪失、ポリオ(流行性小児まひ)に至るまで、極端に拡散的な様々な異常に苦しめられるようになる可能性がある。
- 特にナス科の野菜は食用として使わないようにすべきであり、使わないことが賢明。ただし薬としてならば薬効があるため使うのもよい。
- やむを得ない場合には、陽性の強い方法で料理したり、長い時間火を使って調理したり、味付けもやや濃いめにすると、極陰性のエネルギーを相殺し、身体に対する害をいくらかなりとも減じることができる。
筆者も、調べてみるまでは、こんなに害がありそうなものとは知りませんでした。
完璧に気をつけることは、なかなか難しいとは思いますが、可能な限り気をつけたいと思います。
*1 ベラドンナ(Belladonna):
ベラドンナは、ナス科オオカミナスビ属の多年草。和名としては、オオカミナスビやオオハシリドコロ、セイヨウハシリドコロなどと呼ばれる。
全体的に毒を含み、特に根茎と根の毒性が強いとされる。おもな毒の成分はトロパンアルカロイドで、副交感神経を麻痺させるため、中毒症状では嘔吐や散瞳、異常興奮、錯乱状態が起こり、呼吸困難や心停止から昏睡に陥り、死を迎えるとされる。
古来よりベラドンナは鎮痛などの用途で薬用とされたが、その一方で、毒薬としても使われ、西洋では古くから魔女が使う毒草として有名。
*2 ソラニン(solanine):
おもにナス科の植物に含まれるステロイドアルカロイドの1種とされ、ジャガイモの表皮や芽、ホオズキ、イヌホオズキなどに含まれるとされる。
神経に作用する毒性があり、中毒症状では溶血作用を示し、腹痛やめまい、嘔吐、胃炎、下痢、食欲減退などを起こすとされ、大量に摂取すると、昏睡状態に陥り、死に至るとされる。
*3 チャコニン(chaconine):
チャコニン(α-チャコニン)は、ジャガイモなどに含まれるグリコアルカロイドの1種で、ソラニン(α-ソラニン)と並んで説明されることが多い。グリコアルカロイドとは、植物由来の窒素を含んだ塩基性物質であるアルカロイドに、糖が結合したもの。
ジャガイモでは、芽に最も多く含まれ、葉や茎、花や実、根にも含まれているとされる。過剰に摂取すると、吐き気や下痢、嘔吐、腹痛、頭痛、めまいなどが見られ、重症になると、眠気や無気力、錯乱、衰弱などの神経症状や視覚障害が見られ、場合によっては死亡することがあるとされる。