クシマクロビオティックスから見た、胃潰瘍の原因と対応方法について説明します。
胃潰瘍は、十二指腸潰瘍とともに消化性潰瘍と総称され、そのほとんどがピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ菌)への感染や非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)の投与から引き起こされ、胃や十二指腸の粘膜が欠損してしまった状態とされます。
このうち胃潰瘍は、胃の上部の湾曲部に起こるもので、十二指腸潰瘍は、十二指腸や小腸の入り口に最もよく見られるものとされます。
欧米では、十二指腸潰瘍が多く見られるとされますが、日本では胃潰瘍が多く見られるとされます。
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日本では、胃潰瘍と十二指腸潰瘍ともに男性に多いとされ、胃潰瘍は40~50才台、十二指腸潰瘍は20~40才台に多いとされます。
厚生労働省の調査によると、日本の1987年の患者数は、胃潰瘍が約61万人、十二指腸潰瘍が約24万人とされましたが、2011年の患者数では、胃潰瘍が約36万人、十二指腸潰瘍が約4万人に減っているとされます。
胃潰瘍や十二指腸潰瘍の症状は、みぞおち付近の痛み(胃潰瘍では食後に強く、十二指腸潰瘍では空腹時に強い)やげっぷ、胸やけ、腹部膨満感などとされ、時には吐血や下血、黒い便、貧血などの消化管出血症状もあるとされます。黒い便や貧血などが見られる場合、すでに胃などから出血があり、症状が進んだ状態とされます。
また、体重の減少や食欲低下が著しい場合には、胃癌が疑われることもあるとされます。
以前は、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の原因は、暴飲暴食やストレスと考えられてきましたが、近年では、ピロリ菌に感染して、胃の粘膜が弱り、胃壁が胃酸によって傷ついて潰瘍ができてしまうことが原因であったり、市販薬や処方薬の解熱鎮痛薬の副作用が原因で潰瘍ができる、NSAIDs潰瘍が原因とされたりすることが一般的になっています。
ピロリ菌の感染は、胃潰瘍の患者の90%以上、十二指腸潰瘍の患者のほぼ100%に見られるとされます。ただし、ピロリ菌に感染するとすぐに潰瘍ができるわけではなく、できやすくなったり治りにくくなる傾向があるとされるのが一般的です。
NSAIDs潰瘍の場合、特に、腰痛や関節リウマチの治療に使われる非ステロイド抗炎症薬(NSIDs)や、脳梗塞や心筋梗塞の予防に使われるアスピリンの服用時に、注意が必要とされます。
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従来的医療では、胃潰瘍や十二指腸潰瘍は、内視鏡検査や組織診断で診断が行われ、一般的に、次のような治療が行われるとされます。
- 内視鏡での止血治療(出血がある場合)
- 薬剤治療
- NSAIDs(非ステロイド抗炎症薬)が関連しない場合、ピロリ菌除去として、プロトンポンプ阻害薬(PPI)と抗菌薬が処方される。
- NSAIDs(非ステロイド抗炎症薬)が関連する場合、原則としてNSAIDsを中止する。ピロリ菌がいた場合、ピロリ菌除去として、プロトンポンプ阻害薬(PPI)と抗菌薬が処方される。
- ピロリ菌がいない場合や除菌に失敗した場合、除菌の治療ができない場合など、潰瘍を直す薬剤が処方される。
- 上記と併せて、胃酸の分泌を抑えたり、胃の防御機能を強めたりする薬品(H2受容体拮抗薬<H2RA>やプロトンポンプ阻害薬<PPI>など)が処方される。
実際に、マクロビオティック食事療法を行う場合には、必ず事前に専門家に相談するようにしてください。
西洋現代医学のほかにも、対応方法があるかもしれないということは認識しておきましょう。
▼前提
致命的な症状が疑われる場合や致命的な現象を引き起こしかねない状況が想定される場合には、まずは至急、西洋医学などで医師の受診を受けてください。ここでは、予防的な観点を中心に、原因や対応方法について説明します。
▼原因
マクロビオティックの観点から、胃潰瘍と十二指腸潰瘍とを比べると、十二指腸潰瘍のほうが陽性で、胃潰瘍のほうが陰性とされます。
胃潰瘍は、どちらかというと、精白小麦粉など精白穀物や砂糖、乳製品のような拡散性のある飲食物が、胃の上部に炎症や傷を引き起こすとしています。
一方、十二指腸潰瘍は、どちらかというと、動物性食品や焼いた食品、塩などによって起こり、こうした食品が、胃の下部に刺激を与えて破裂させるとしています。
▼症状の予防と解消
- 胃潰瘍は、陰性傾向に対応した食事(標準食から陽の要因をわずかに強調する方向で、食事内容を修正)に従います。
- 十二指腸潰瘍は、陽性傾向に対応した食事(標準食から陰の要因をわずかに強調する方向で、食事内容を修正)に従います。*
また以下の注意点があります。一部を紹介しますので、専門家への相談の際に確認するとよいのではと思います。
- 全粒穀物と調理した野菜を主体にして、胃潰瘍では緑の葉物野菜を多めに、十二指腸潰瘍では根菜類を多めに摂るとよい。
▼留意点
- 生命の危険が伴うような症状や合併症などが疑われる場合には、緊急な医療処置が必要である。まずは至急、医療機関を受診すること。
* :
参考にしている書籍(第5刷)では、胃潰瘍の治療のための食事は陽性症状に対応した食事、十二指腸潰瘍(消化性潰瘍)の治療のための食事は陰性症状に対応した食事となっていますが、誤植と考えられるため、上記に変更しています。
THE マクロビオティック 久司道夫 マガジンハウス
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