クシマクロビオティックスから見た、肝炎の対応方法について説明します。
肝炎は、肝臓の細胞に炎症が起こり、肝細胞が壊される症状で、日本では、肝臓病のおよそ80%がウイルス性肝炎とされます。そのなかでも、B型肝炎ウイルス(HBV)またはC型肝炎ウイルス(HCV)への感染による肝炎が多いとされます。
厚生労働省の発表では、日本の肝炎ウイルスへの持続感染者(症状の出ていないキャリア)は、B型で110~140万人、C型が190~230万人と推定されます。しかしながら、感染時期が明確でなく、自覚症状がないことも多いため、感染したことにも気付かずに、肝硬変や肝臓癌に移行する感染者が多いとされます。
感染者の年齢では40才台以上に多く、ウイルスに対策が講じられる前に受けた輸血などの医療行為などが、感染の背景にあるとされますが、近年では、若年者のB型肝炎ウイルスへの感染が増えてきているとされます。
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また、アルコールを飲まないのに脂肪肝になっているNASH(非アルコール性脂肪性肝炎)が増えているとされます。ほかには、アルコールや薬物による肝炎や、その他の疾患によって肝炎が引き起こされることがあるとされます。
肝炎は、大きく分類すると、次の3つのタイプがあります。
1 急性肝炎
急性肝炎では、症状が突然に現われ、軽症のものから、死に至る重症のものまで様々な症状が見られる。
次のような症状が見られる。
- 食欲の減退
- 気分がすぐれない
- 吐き気、嘔吐
- 発熱
- 濃い色の尿が出る
- 黄疸の悪化
黄疸は、最初の1~2週間に強く現われ、2~4週間すると消滅することが多い。
B型肝炎は、概してA型肝炎よりも重症であることが多いとされる。
急性肝炎は、C型を除くと、重症化や劇症化しなければ予後が良好とされる。
2 慢性肝炎
肝炎の状態が、6か月以上続いているもの。
3 劇症肝炎
急性の肝炎が、短期間のうちに悪化した状態で、生命の危険がある。
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そして、感染の原因として多い肝炎ウイルスには、A型やB型、C型、D型、E型などがあります。肝炎ウイルスをまとめると、次のようになります。
- A型肝炎ウイルス(HAV)
おもに水や食べものを介して感染する。A型肝炎ウイルスが感染者の便に排出され、飲食物を経由し、経口感染する。
生ガキなどの食品で感染することも多いが、近年では衛生状態の改善によって感染者は減っている。慢性化することは、まずないとされるが、ごくまれに劇症化して死に至ることがある。
従来的医療では、急性期の対症療法が中心で、治療薬はなく、安静が基本的な治療。一般的には、2~3カ月で治癒するとされる。1度感染すると、終生免疫が成立し再感染することはないとされる。
- B型肝炎ウイルス(HBV)
おもに血液や体液を介して感染する。以前は、母子間での感染や輸血などの医療行為による感染が多かったが、近年では激減しているとされる。感染者の免疫機能が正常であれば、ほとんどが急性肝炎の形で現われ、治癒に向かう。しかしながら、免疫機能が正常な人が感染したとしても、慢性化しやすい欧米型のB型肝炎(ジェノタイプA型)が性的接触などによって増えているとされる。
B型肝炎ウイルス感染者の5~10%程度が慢性化する。
従来的医療では、抗ウイルス剤などの薬剤処方による治療が中心となる。
1度感染すると、終生免疫が成立し再感染することはないとされる。
- C型肝炎ウイルス(HCV)
おもに血液や体液を介して感染する。以前は、輸血などの医療行為による感染が多かったが、現在ではほとんどなくなったとされる。性的接触による感染は少ない一方で、薬物などの注射の回し打ちや不衛生なピアスの処置などで感染する。
日本では、60才以上の感染者が多い。
C型肝炎ウイルス感染者の70%が慢性化する。
感染したことに気づいていない感染者が多いとされ、慢性肝炎や肝硬変、肝臓癌に進行することが多い。日本の肝臓癌による死亡者数は、2015年に約19000人で、肝臓癌の原因の約80%がC型肝炎ウイルスを由来としたものとされる。
従来的医療では、インターフェロン(IFN)などの抗ウイルス療法や、症状の進行を遅らせる肝庇護療法などの治療が中心となる。近年、治癒率が劇的に上がったとされる。
- D型肝炎ウイルス(HDV)
おもに血液や体液を介して感染し、かつB型肝炎ウイルスに感染している人にだけ感染する。D型肝炎ウイルスへの重複感染によって、全体的な症状が悪化することがある。
日本では、極めて稀とされる。従来的医療での治療は、B型と同様。
- E型肝炎ウイルス(HEV)
おもに水や食べものを介して感染する。
日本では、豚や猪、鹿のレバーなど加熱不十分な肉やジビエ料理などで、2000年頃から北海道を中心に、E型肝炎を起こした例が複数報告されているとされる。
慢性化することはない。ただし、妊婦が感染した場合には、重篤な経過をとることが報告されている。
従来的医療では、急性期の対症療法が中心で、治療薬はなく、安静が基本的な治療。
そのほか、NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)では、従来的医療としての治療薬はなく、背景にある脂肪肝と肥満の解消、合併症(糖尿病や高血圧、メタボリックシンドローム)の治療が行われるとされます。
実際に、マクロビオティック食事療法を行う場合には、必ず事前に専門家に相談するようにしてください。
西洋現代医学のほかにも、対応方法があるかもしれないということは認識しておきましょう。
▼前提
致命的な症状が疑われる場合には、まずは至急、西洋医学などで医師の受診を受けてください。
ここでは、予防的な観点を中心に、原因や対応方法について説明します。
▼原因
マクロビオティックの観点からすると、肝炎は、全般的に、砂糖や菓子類、清涼飲料水、その他の炭酸飲料、軽い乳製品、精白穀物、精白穀物を使ったパスタなどの製品、熱帯産食品、大量の果物や果汁、スパイス類、ハーブ類、脂肪分の過剰摂取、その他の極陰性な食品を含め、極端な食品の摂取によって起きるとされます。
A型肝炎は、やや陰性な症状とされ、おもに砂糖や菓子類、乳製品などが原因で起こるとされます。またB型肝炎は、やや陽性の症状で、動物性食品と脂っぽい食品の両方を摂取した場合が多いとされます。C型肝炎は、陰陽両方の要因で起こり、脂っぽい食品や、脂肪や蛋白質を多く含む食品、アルコール類、コーヒーなどの刺激物、砂糖などの単糖類の摂りすぎによるものとされます。
また、肝炎の発症は、食事とともに、生活様式や環境要因が関与しているとしています。こうしたものとして、(電磁調理器を含む)電気レンジや電子レンジを使った調理や、その他の人工的電磁波の照射、ワクチンの接種、レントゲン照射、その他の医療処置や手術などが挙げられるとしています。
▼症状の解消
標準的な食事として、以下の指針が推奨されます。
- A型肝炎、E型肝炎
陰性傾向に対応した食事(標準食から陽の要因をわずかに強調する方向で、食事内容を修正)に従います。 - B型肝炎、D型肝炎
陽性傾向に対応した食事(標準食から陰の要因をわずかに強調する方向で、食事内容を修正)に従います。 - C型肝炎
陰陽両極端な症状に対応した、中庸の食事に従います。
また以下の注意点があります。一部を紹介しますので、専門家への相談の際に確認するとよいのではと思います。
- 食べものは、全て加熱調理したものとし、生のままでは食べない。
- (食事療法をはじめてから)最初の1カ月間は、硬く焼き締めた小麦粉製品は避ける。ただし、しっかりと加熱して、スープに入れた麺類ならば、1週間に1回食べてよい。
- (食事療法をはじめてから)最初の1カ月間は、油は使わない。その後は、1週間に2~3回、少量ずつ使うようにする。
- 魚介類を含めて、動物性食品は食べない。
- 生姜やニンニク、スパイス類、刺激物は避ける。
- (食事療法をはじめてから)最初の1カ月間は、果物や果汁を避ける。その後は、ひとつまみの自然海塩を加えて、加熱調理した温帯地域の果物を少量食べてよい。
- 甘い野菜の飲みものを、毎日、小さなコップに1日1杯ずつ飲む。
THE マクロビオティック 久司道夫 マガジンハウス
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